アロマ(芳香植物)と魔女、というと怪しいことを言っているな、と思われるかもしれません。
でも、アロマをはじめ、植物を扱う者は魔女と言われていた時代があり、魔女狩りの対象になったこともあるそうです。
植物の中には麻薬のように、幻覚が見えたり、錯乱状態になったりするものがあります。
その豹変ぶりに恐怖を抱き、薬草を扱う者を迫害(魔女狩り)したこともあったようです。
一方、王様や教会などのお墨付きがあれば、ハーバリスト(現在の薬剤師)として名を後世に残せました。
つまり
- 身分の高い人に仕える人はハーバリスト
- それ以外は魔女
ということです。
そんな、魔女狩りと関わりのあるベラドンナ、という植物について説明したいと思います。
目次
中世の医学
中世ヨーロッパでの医学は、大聖堂または修道院において、訓練を受けた聖職者が医療を行っていました。
感染症の流行が度々おこり、医師の必要性があったことから、1140年シチリア王により医師の国家免許が出来ました。
<イギリス>
西暦1500年代に入ると、薬用植物の研究が盛んに行われるようになり、イギリスではハーブ医学「ハーバリスト」が活躍しました。
- パラケルスス(本名 テオフラストゥス・ホーエンハイム 1493-1541)
- 医師・化学者・錬金術師
- 医化学の祖
- 特徴表示説を唱える(腎臓は豆の形に似ている=豆を食すると腎臓に良い)
- ウィリアム・ターナー(1508?-1568)
- イギリスの牧師・医者・博物学者・植物学者・薬剤師
- イギリス植物学の父
- 古代ローマ皇帝ネロの軍医ディオスコリデスの著書「マテリア・メディカ(薬物誌)」を英訳した。
- ジョン・ジェラード(1545-1612)
- イギリスの床屋・植物学者・船医
- 著書「本草書または植物の話」
- ジョン・パーキンソン(1567-1650)
- 植物学者・博物学者・薬剤師(ジェームズ1世・チャールズ1世に仕える)
- 著書「広範囲の本草学書」「日のあたる楽園、地上の楽園」(園芸書)
- ニコラス・カルペパー(1616-1654)
- 薬剤師・占星術師
- 著書「医学の傑作(医術と美容に関する巻)」「The English Physicians」
- 薬草医学と占星術・美容法を織り交ぜた医療活動を行っていた。当時の医師達を批判し(医学は庶民のためにあるべき)自らの健康は自ら守らなければいけないと主張した。
<ローマ>
いっぽうローマでは、宗教弾圧が起こり、植物を利用した伝統医療も抑圧されました。
植物を扱っていた人達は、男女問わず「魔女」とされ、「魔女狩り」と称し処刑されました。
その背景にあったのは、当時の信仰や思想から外れた人達を排除する目的でした。
また、魔女を仕立てあげる為に使われたのが、ベラドンナ(ナス科)という説もあります。
ベラドンナ=魔女の草
ベラドンナは人が摂取すると、幻覚が起き、錯乱状態を引き起こします。
大量に摂取すれば、呼吸や心臓が停止することから、古くから毒草として扱われて来ました。
また、急激に状態が変化することから、「魔女の草」「悪魔の草」とも呼ばれていました。
つまり、気に入らない人がいると、その人にベラドンナを摂取させ、幻覚や錯乱状態にし、「あいつは魔女だ!」と、魔女を仕立てるために使われたそうです。
ベラドンナ=美しい淑女
ベラドンナ(Bella Donna)という名前は、イタリア語で「美しい淑女」という意味です。
ルネッサンス期(14世紀~16世紀)のイタリアでは、ベラドンナの実から抽出したものを、散瞳剤(目薬)として女性が使用してました。
その目薬を使用すると、瞳孔が開き、キラキラとした目になることから、美容目的として使用されていました。
失明する事故が、後を絶たなかったようです。
現代おいてのベラドンナ
ベラドンナの学名は、Atropa belladonna です。
Atropaは、ギリシャ神話に出てくる運命の女神Atropos(アトロポス)の名前から来ています。
アトロポスは三姉妹の末っ子で、運命の糸を切る役割をしていました。
誰しも避けられないまたは、誰にでも必ず起きること(死)という意味でもあります。
美しい淑女でありながら、運命(命)を断ち切るもの(猛毒)であることから、学名にもいわれが残されています。
ベラドンナの毒性は、根の部分に多く含まれていますが、根のエキスから分離精製した「ベラドンナコン」は、薬品(鎮痛剤・散瞳薬さんどうやく)として使用されています。
また、ベラドンナコンの成分の1つに、アトロピンという成分があります。
アトロピンは、筋を収縮させる神経伝達物質「アセチルコリン」を抑制することから、サリン(神経伝達を麻痺させる)や農薬の解毒剤として使われています。
使い方ひとつで、毒薬にも良薬にもなるベラドンナ。
私は、沢山の時代を生き抜いて来たベラドンナから、人間がどう関わるべきかを教えられたような気がします。
ベラドンナは、葉を触っただけでも、かぶれる場合があります。
毒性が強いので、民間療法には使えません。
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